記事の要点
・「○○さえ食べれば(飲めば)よい」は嘘です。
・減塩は必須です!
・食事全体を見直しましょう。ハーバード大学の栄養専門家が推奨する食事療法をご紹介します。
・下がらないまま放置は最も危険です!医師とよく相談しましょう。
血圧を下げる「お手軽な食べ物(飲み物)」はありません
「血圧が高い」と言われた方にお話を伺うと、多くの方がまず「食べ物(飲み物)で下げたい」とおっしゃいます。
それは間違っていません。食事療法は、高血圧の治療で最も重要な基礎となるものです。
しかし、多くの方が、何か特定の食べ物(飲み物)に「血圧を下げる物質」が含まれていて、多量に食べる(飲む)ことで血圧を下げることができる、という誤解をしておられます。
テレビや雑誌などでも「○○さえ食べれば健康になる!一生薬いらず!」というような特集が組まれることも多いため、そのような誤解が世の中に蔓延しています。
残念ながら、そのような情報の多くは、科学的根拠が乏しく信頼できないものがほとんどです。
血圧を下げるのに最も効果的なのは、減塩です。
科学的に最も確立された血圧を下げる食事療法とは、塩分を減らすことです。
塩分を過剰に摂取すると、血管内に水分が貯留しやすくなるため、血流量が増えて血管の壁にかかる圧力が強くなります。その結果、血圧が上がりやすくなります。
厚生労働省によると、日本人の平均的な塩分摂取量は1日10g程度です。
高血圧治療ガイドラインによると、高血圧患者さんの、減塩目標は1日6g未満です。
塩分をへらすためには、まずご自身の食生活全体をみて、どこで塩分を多くとっているかを把握する必要があります。
特に気をつけたいのは、ラーメンなどの麺類のスープ、漬物や梅干し、加工食品、調味料などです。
スーパーやコンビニで食品を買うときは、栄養表示で塩分量を確認しましょう。
カリウムの多い野菜や果物を多く食べるのも効果的です。
以下に、ポイントをまとめておきます。
減塩だけでは十分と言えません。健康な体をつくるための食事療法をご紹介します。
高血圧になる原因は、実は塩分だけではありません。
カロリーのとりすぎによる肥満、アルコールの飲みすぎ、ストレス、喫煙、運動不足などの生活習慣や、遺伝的な体質など様々な要因が密接に関係しています。
なので、血圧を下げるため、ひいては健康な体をつくるためには、生活習慣全体を見直す必要があります。
ここでは、健康になるためのハーバード大学の栄養学専門家が推奨する食事療法を紹介します。
ポイントは食事の半分を野菜や果物(野菜が多め。ただしイモは除く)にすることです。
あとの半分を炭水化物、タンパク質で摂取します。
全粒穀物は、日本ではなかなか入手が難しい場合も多いので参考程度にしてください。
タンパク質は「健康的な質の良い」タンパク質であることが重要です。
加工食品はなるべく食べないようにし、魚や鶏肉、豆類がおすすめです。
甘い飲み物は避けたほうが良いです。
このような原則にのっとって毎日の食事の献立を考えましょう。
高血圧の方は、さらに上記のように減塩をする必要があります。
下がらないまま放置するのは最も危険です。医師と相談して薬の治療も考えましょう。
食事療法をいくらがんばっても、血圧が思うように改善しないケースも多々あります。
動脈硬化の状態などによっては、食事だけで血圧を十分に下げるのは困難な場合があります。
そのような時に、そのまま放置しないことが重要です。
なぜなら、高血圧を放置すると、脳卒中、認知症、心臓病などの重大な病気になるリスクが非常に大きくなるからです。
「薬を一生飲むのは嫌だから薬は飲みたくない」とおっしゃられる方は非常に多いです。
そのお気持ちは非常によくわかります。
しかし、現在日本の医療機関において保険診療で処方される血圧の薬は、発売前に莫大な資金や労力をかけて安全性や有効性の試験を行っています。
その中から、医師が患者さんの状態に応じて適切な薬を処方しています。
薬で血圧を下げることで、脳卒中、認知症、心臓病などのリスクを大きく下げることができます。
私は循環器内科専門医として、患者さんがこのような病気で将来苦しむのを予防するため、必要であればしっかり薬の治療も行うよう、強くおすすめしています。
まとめ
・「○○さえ食べれば(飲めば)よい」は嘘です。
・減塩は必須です!
・食事全体を見直しましょう。野菜を中心とした、質の良い食事をするようにしましょう。
・下がらないまま放置は最も危険です!脳卒中、認知症、心臓病などを予防するため、医師とよく相談して、必要であれば薬も飲みましょう。
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