
心不全とは?主な症状・原因・検査・治療をわかりやすく解説
心不全は、心臓の構造や働きに異常が生じ、全身が必要とする血液を十分に送り出せなくなったり、心臓に戻ってきた血液を十分に受け入れられなくなったりする状態です。
「心不全」という名前から、心臓が完全に止まる病気だと思われることがありますが、そうではありません。心臓のポンプ機能が低下することで、肺や全身に血液や水分がたまり、息切れ、むくみ、体重増加、疲れやすさなどの症状が現れます。
心不全は一つの病名というよりも、高血圧、心筋梗塞、弁膜症、心筋症、不整脈など、さまざまな病気の結果として起こる「状態」または「症候群」です。症状が改善した後も、再び悪化することがあるため、早期発見と治療の継続が重要です。
心不全の主な初期症状
心不全では、心臓から送り出される血液が不足する症状と、肺や全身に血液・水分がたまる「うっ血」の症状が現れます。
代表的な初期症状は次のとおりです。
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坂道や階段を上ったときに息切れする
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以前はできていた運動や家事がつらくなる
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疲れやすい、体がだるい
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足首、足の甲、すねがむくむ
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数日から1週間ほどで体重が急に増える
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動悸や脈の乱れを感じる
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夜間に咳が出る
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食欲がない、お腹が張る
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尿の量が少なくなる
むくみは両足に現れることが多く、指で押した部分がしばらくへこんだままになることがあります。心不全による体重増加は、食べ過ぎではなく、体内に水分がたまっているサインである可能性があります。
ただし、息切れやむくみは、肺の病気、腎臓の病気、貧血、静脈の病気などでも起こります。症状だけで自己判断せず、これまで普通にできていた動作が難しくなった場合や、症状が続く場合は医療機関を受診してください。
心不全が悪化したときの症状
心不全が進行すると、軽い動作だけでも息苦しくなり、さらに悪化すると安静にしていても症状が現れます。
次のような症状は、心不全が悪化している可能性があります。
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横になると息苦しく、上半身を起こさないと眠れない
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夜中に突然、息苦しさや咳で目が覚める
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安静にしていても息苦しい
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むくみが急に強くなった
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短期間で体重が急増した
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尿の量が明らかに減った
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食事がとれないほど食欲が低下した
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強い動悸、めまい、ふらつきがある
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反応が鈍い、意識がもうろうとする
横になれないほどの呼吸困難は「起坐呼吸」と呼ばれ、早急な診察や入院治療が必要になることがあります。
このような症状では、すぐに119番を
次の症状がある場合は、様子を見たり、自分で車を運転したりせず、119番に連絡してください。
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突然、激しい息苦しさが現れた
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普通に話せないほど呼吸が苦しい
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安静にしていても呼吸が非常に苦しい
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顔色や唇の色が悪い、青紫色になっている
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冷や汗をかいている
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呼びかけへの反応が鈍い、意識を失った
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強い胸の痛みや圧迫感を伴う
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ピンク色の泡状の痰が出る
救急車を呼ぶべきか判断に迷う場合は、実施地域では救急安心センター「#7119」に相談できます。ただし、明らかに呼吸や意識の状態が悪い場合は、#7119ではなく119番に連絡してください。
心不全の主な原因
心不全は、心臓に負担をかけるさまざまな病気によって起こります。代表的な原因には次のものがあります。
高血圧
高い血圧に逆らって血液を送り出し続けるため、心臓の筋肉に負担がかかります。長期間続くと、心臓の筋肉が厚く硬くなり、心不全につながることがあります。
心筋梗塞・狭心症
心臓の筋肉に血液を送る冠動脈が狭くなったり詰まったりすると、心筋が傷つき、心臓のポンプ機能が低下します。
心臓弁膜症
心臓の弁が狭くなったり、きちんと閉じなくなったりすると、血液を効率よく送り出せなくなり、心臓への負担が増加します。
心筋症・心筋炎
心臓の筋肉そのものに異常が生じる病気です。遺伝、感染症、アルコール、薬剤などが関係する場合がありますが、原因が特定できないこともあります。
不整脈
脈が速すぎる、遅すぎる、または不規則になると、心臓が効率よく血液を送り出せなくなることがあります。
その他の病気
先天性心疾患、糖尿病、重度の貧血、甲状腺疾患、睡眠時無呼吸症候群などが、心不全の発症や悪化に関係することもあります。
急性心不全と慢性心不全の違い
急性心不全
急性心不全は、心臓の働きが急激に悪化し、息苦しさなどの症状が突然現れた状態です。初めて心不全を発症する場合と、慢性心不全が急に悪化する場合があります。
症状の程度はさまざまですが、重症の場合は生命に関わるため、迅速な治療が必要です。
慢性心不全
慢性心不全は、心臓の機能が低下した状態が長く続くものです。治療によって安定している時期があっても、感染症、塩分や水分の過剰摂取、過労、薬の中断、不整脈などをきっかけに急激に悪化することがあります。
心不全の検査と診断
心不全の診断では、症状や経過を確認したうえで、複数の検査結果を組み合わせて判断します。
診察
血圧、脈拍、酸素の状態を測定し、心臓や肺の音、足のむくみ、首の血管の張りなどを確認します。
血液検査
BNPやNT-proBNPなど、心臓への負担を反映する数値を調べます。腎臓や肝臓の機能、貧血、電解質、糖尿病なども確認します。
心電図検査
不整脈、心筋梗塞の痕跡、心臓の肥大などがないかを調べます。
胸部レントゲン検査
心臓の大きさや、肺に水分がたまっていないか、胸水がないかなどを確認します。
心臓超音波検査・心エコー
心臓の大きさ、動き、壁の厚さ、弁の状態、血液の流れなどを調べる重要な検査です。
必要に応じて、ホルター心電図、心臓CT、心臓MRI、運動負荷検査、心臓カテーテル検査などが行われます。
一つの検査結果だけで判断するのではなく、心不全の有無、重症度、原因を総合的に評価します。

心不全の患者さんのレントゲン写真
心不全の影響で心臓が大きくなり、肺が白っぽく水が溜まっているのが分かります。
心不全の治療
心不全の治療目的は、息切れやむくみなどの症状を改善し、心臓への負担を減らし、入院や再発を予防することです。原因、心臓の機能、年齢、腎機能、血圧、合併症などによって治療内容は異なります。
薬物療法
体内にたまった余分な水分を排出する利尿薬や、心臓を保護して負担を軽減する薬などを使用します。
心不全の種類や患者さんの状態に応じて、次のような薬が検討されます。
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利尿薬
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ARNI
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ACE阻害薬・ARB
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β遮断薬
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MRA・ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬
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SGLT2阻害薬
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その他、心拍数や心臓の働きを調整する薬
すべての患者さんに同じ薬が処方されるわけではありません。血圧、脈拍、腎機能、カリウム値などを確認しながら、種類や量を調整します。
症状が良くなった場合でも、自己判断で薬を減らしたり、中止したりしないでください。副作用や体調の変化がある場合は、服用を中断する前に主治医や薬剤師へ相談しましょう。
原因となる病気の治療
心筋梗塞や狭心症が原因の場合は、冠動脈のカテーテル治療や手術が必要になることがあります。弁膜症では、弁を修復・交換する手術やカテーテル治療、不整脈では薬物治療やカテーテルアブレーションなどが検討されます。
医療機器・手術による治療
薬物療法だけでは十分な改善が得られない場合、心臓再同期療法・CRT、植え込み型除細動器・ICDなどの医療機器を使用することがあります。重症例では、補助人工心臓や心臓移植が検討される場合もあります。
心臓リハビリテーション
医師の管理のもとで行う運動療法、食事指導、服薬指導、生活相談などを組み合わせた治療です。体力や生活の質を維持し、再入院を防ぐことを目指します。
心不全の悪化を防ぐ日常生活
心不全では、医療機関での治療だけでなく、毎日の自己管理も重要です。
毎日、体重を測る
できるだけ毎朝、排尿後・朝食前など同じ条件で測定し、記録します。急な体重増加は、体内に水分がたまっているサインである可能性があります。
血圧・脈拍・症状を記録する
血圧や脈拍に加え、息切れ、むくみ、食欲、尿量、睡眠の状態などを記録すると、悪化の早期発見に役立ちます。
薬を指示どおりに服用する
症状がない時期にも薬を続けることが重要です。飲み忘れが多い場合は、薬の一包化や服薬ケースについて医師・薬剤師に相談しましょう。
塩分を控える
塩分を取り過ぎると、体内に水分がたまりやすくなります。加工食品、漬物、汁物、麺類のスープ、総菜などに含まれる塩分にも注意しましょう。
水分をどの程度制限するかは、病状や季節、腎機能などによって異なります。自己判断で極端に減らしたり増やしたりせず、主治医の指示に従ってください。
適切な範囲で体を動かす
病状が安定している場合は、主治医が許可した範囲での運動が勧められます。一方、息切れやむくみが悪化しているときに無理をするのは避けてください。
心不全の原因や危険 因子を管理する
高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満などを適切に管理し、禁煙、節酒、十分な休息を心がけます。
心不全についてよくある質問
心不全は治りますか?
原因となる病気を治療することで、心臓の働きが大きく改善する場合があります。一方、長期的な治療や自己管理が必要になるケースも少なくありません。
完全に元の状態へ戻すことが難しい場合でも、適切な薬物療法や生活管理によって、症状、生活の質、入院リスク、生命予後の改善が期待できます。
心エコーで心臓の収縮力が正常なら、心不全ではありませんか?
心臓の収縮力が保たれていても、心臓が十分に広がらず、血液を受け入れにくくなるタイプの心不全があります。「駆出率が保たれた心不全」またはHFpEFと呼ばれ、特に高齢者や高血圧のある方にみられます。心エコーの一つの数値だけではなく、症状や血液検査などを含めて総合的に判断します。
心不全が疑われる場合は何科を受診しますか?
基本的には循環器内科を受診します。近くに循環器内科がない場合は、まず内科やかかりつけ医へ相談してください。
ただし、安静にしていても激しく息苦しい、意識がおかしい、強い胸痛があるなどの症状では、通常の外来を待たず119番に連絡してください。
なぜ毎日体重を測るのですか?
心不全が悪化すると、体内に水分がたまり、むくみが目立つ前に体重が増えることがあります。毎日同じ条件で体重を測ることで、悪化の兆候に早く気づきやすくなります。
まとめ
心不全は、心臓の働きが低下することで、息切れ、むくみ、急な体重増加、疲れやすさなどが現れる状態です。
初期には「年齢のせい」「運動不足のせい」と見過ごされることがあります。しかし、以前は問題なくできていた動作で息切れする、両足がむくむ、体重が急に増えるといった変化は、心不全のサインかもしれません。
症状が続く場合は、早めに循環器内科やかかりつけ医へ相談してください。突然の激しい息苦しさ、意識障害、強い胸痛などがある場合は、すぐに119番へ連絡しましょう。
ご注意
このページは、心不全についての一般的な医療情報を提供するものです。個別の診断や治療方針は、年齢、症状、検査結果、合併症などによって異なります。薬の変更や運動・食事・水分量の調整は、自己判断で行わず、必ず医師へご相談ください。
参考情報
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日本循環器学会・日本心不全学会「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」
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国立循環器病研究センター「心不全」
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日本循環器協会「心不全」
監修
監修:花園内科 院長 伊藤 創
医学博士
日本内科学会認定内科医
日本循環器学会認定 循環器専門医
最終更新日:2026年7月14日