
健診で腎機能低下・尿蛋白を指摘された方へ|eGFR・クレアチニン・CKDを解説
健康診断で、
「クレアチニンが高いと言われた」
「eGFRが低下している」
「尿蛋白が+になっている」
「腎機能障害のため再検査と言われた」
という結果を受け取った方もいると思います。
腎臓の病気は、初期にはほとんど症状がないことが少なくありません。そのため、健康診断の血液検査や尿検査が、腎臓の異常に気づく最初のきっかけになることがあります。
一方で、eGFRの低下や尿蛋白は、一度の検査だけで慢性腎臓病(CKD)と診断されるわけではありません。脱水、発熱、激しい運動などによって一時的に異常が出ることもあります。
大切なのは、
・どの程度の異常なのか
・以前の検査と比べて変化しているか
・尿蛋白が持続しているか
・高血圧や糖尿病などの原因がないか
を確認することです。
健診で異常を指摘された場合は、そのまま放置せず、一度医療機関で再評価を受けることをおすすめします。
まず知っておきたいポイント
・eGFRは腎臓が血液をろ過する能力の目安です
・クレアチニン(Cr)は腎機能を評価するための血液検査です
・尿蛋白は腎臓から本来漏れにくい蛋白が尿中に出ている状態です
・eGFR低下や尿蛋白が3か月以上続く場合、慢性腎臓病(CKD)の可能性があります
・CKDは初期には自覚症状がほとんどありません
・早期から血圧、糖尿病、生活習慣などを適切に管理することが重要です
「腎機能が悪い」とはどういうことでしょうか?
腎臓には、血液中の老廃物や余分な水分を尿として排泄する働きがあります。
健康診断では主に、
・血清クレアチニン(Cr)
・eGFR
によって腎機能を評価します。
クレアチニン(Cr)とは?
クレアチニンは筋肉の代謝によって生じる老廃物です。
通常は腎臓から尿中へ排泄されますが、腎臓のろ過能力が低下すると血液中のクレアチニンが高くなります。
ただしクレアチニン値は筋肉量にも影響されます。
筋肉量の多い方ではやや高くなることがあり、反対に高齢者や筋肉量の少ない方では、腎機能が低下していてもクレアチニンがそれほど高くならない場合があります。
そのため、クレアチニンの数値だけではなくeGFRもあわせて評価します。
eGFRとは?
eGFR(推算糸球体ろ過量)は、クレアチニン値、年齢、性別などから計算される腎機能の指標です。
単位は「mL/分/1.73m²」で表され、数値が低いほど腎臓のろ過能力が低下していることを意味します。
一般的には、
・90以上:正常または高値
・60~89:正常~軽度低下
・45~59:軽度~中等度低下
・30~44:中等度~高度低下
・15~29:高度低下
・15未満:非常に高度な腎機能低下
と分類されます。
ただし、eGFRが60未満だったからといって、1回の検査だけで慢性腎臓病と決まるわけではありません。
過去の検査結果との比較や再検査が重要です。
尿蛋白とは?
健康な腎臓では、血液中の蛋白質はほとんど尿へ漏れません。
ところが、腎臓の糸球体などに障害が起こると、蛋白質が尿中へ漏れることがあります。これが「蛋白尿」です。
健診では、
尿蛋白(-)
尿蛋白(±)
尿蛋白(1+)
尿蛋白(2+)
尿蛋白(3+)
などと表示されます。
特に「1+以上」を指摘された場合には、一度医療機関で詳しく調べることをおすすめします。
尿蛋白が出ても、一時的なことはあります
尿蛋白が陽性だからといって、必ず腎臓病があるわけではありません。
例えば、
・激しい運動
・発熱
・脱水
・体調不良
・長時間立っていた場合
などで一時的に尿蛋白が出ることがあります。
そのため、尿蛋白を指摘された場合には、再検査を行って「持続しているかどうか」を確認することが重要です。
eGFRが正常でも尿蛋白があれば問題ですか?
はい。腎機能を評価するときは、eGFRだけを見るのではなく、尿蛋白も非常に重要です。
例えば、
「eGFR 75なので腎機能は問題なさそう」
と思われる場合でも、尿蛋白が持続していれば腎臓に障害が起きている可能性があります。
反対に、eGFRがやや低くても尿蛋白がなく、長期間ほとんど変化していない場合もあります。
したがって腎臓病は、
「eGFRの程度」
+
「尿蛋白・アルブミン尿の程度」
+
「時間的な変化」
を組み合わせて評価することが大切です。
慢性腎臓病(CKD)とは?
慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)とは、腎臓の障害または腎機能の低下が慢性的に続いている状態です。
代表的には、
・eGFR 60未満
または
・蛋白尿、アルブミン尿など腎障害を示す所見
のいずれかが3か月を超えて続く場合にCKDと診断します。
CKDは珍しい病気ではなく、高血圧、糖尿病、加齢などとも深く関係しています。
また、CKDが進行すると腎機能がさらに低下するだけではなく、心筋梗塞、脳卒中、心不全など心血管疾患のリスクとも関連します。
そのため、「まだ症状がないから大丈夫」と放置せず、早い段階から適切に管理することが重要です。
腎機能低下・尿蛋白の主な原因
原因は一つではありません。
特に多いものとして次のような病気があります。
1.高血圧
高血圧が長期間続くと、腎臓の細い血管に負担がかかり、徐々に腎機能が低下することがあります。
これを高血圧性腎硬化症などと呼びます。
腎機能を守るうえでも血圧管理は非常に重要です。
2.糖尿病
糖尿病は慢性腎臓病の重要な原因の一つです。
初期にはeGFRが正常でも、尿中にアルブミンが増えることがあります。
糖尿病がある方では、血糖値だけでなく腎機能や尿検査を定期的に確認することが重要です。
3.慢性糸球体腎炎
腎臓の「糸球体」という部分に炎症が起こる病気です。
蛋白尿だけではなく、
・血尿
・高血圧
・むくみ
などを伴うことがあります。
IgA腎症などさまざまな病気があります。
4.加齢や動脈硬化
腎機能は年齢とともに徐々に低下する傾向があります。
特に、高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙などがあると、動脈硬化による影響が加わることがあります。
ただし、「高齢だからeGFRが低くても問題ない」というわけではありません。
年齢だけではなく、尿蛋白や腎機能低下のスピードなどを総合的に判断します。
5.薬剤による腎障害
一部の薬剤によって腎機能が悪化することがあります。
特に鎮痛薬として使用されるNSAIDsなどは、脱水時や高齢者、もともと腎機能が低下している方では注意が必要です。
市販薬やサプリメントを含め、服用しているものがあれば受診時にお知らせください。
自己判断で処方薬を中止する必要はありません。
6.脱水などによる一時的な腎機能低下
夏場の発汗、下痢、嘔吐、発熱、食事や水分摂取不足などによって脱水になると、一時的にクレアチニンが上昇しeGFRが低下することがあります。
再検査で改善するケースもあります。
7.尿路の通過障害など
前立腺肥大、尿路結石などにより尿の流れが妨げられると、腎機能に影響することがあります。
必要に応じて画像検査や泌尿器科での評価を行います。
健診でどのくらいの数値なら受診したほうがよいですか?
健診で次のような結果を指摘された場合は、医療機関での再評価をおすすめします。
・尿蛋白が1+以上
・尿蛋白±が繰り返しみられる
・eGFRが60未満で、以前より低下している
・eGFRが45未満
・クレアチニンが基準値を超えている
・尿蛋白と血尿の両方を指摘された
・高血圧や糖尿病があり、腎機能低下や尿蛋白もある
特にeGFRが45未満の場合は、健診結果をそのままにせず、医療機関を受診してください。
若い方では、eGFRが60前後であっても年齢から考えて低い場合があるため、詳しい評価が必要になることがあります。
また、「前年よりeGFRが急に低下している」場合には、数値そのものだけでなく変化のスピードも重要です。
早めの受診が必要な症状
腎臓病は無症状のことが多い一方、次のような症状がある場合は早めに医療機関を受診してください。
・尿量が急に減った
・顔や足のむくみが急に強くなった
・息苦しい
・短期間で体重が大きく増えた
・肉眼で分かる血尿が出た
・非常に血圧が高い
・強いだるさ、吐き気、食欲低下がある
特に「尿がほとんど出ない」「強い息苦しさがある」などの場合には、緊急性の高い病態も考えられます。
医療機関ではどのような検査をしますか?
健診で腎機能低下や尿蛋白を指摘された場合、健診結果だけでは原因まで分からないことが多いため、必要に応じて追加検査を行います。
血液検査
・クレアチニン
・eGFR
・尿素窒素(BUN)
・ナトリウム、カリウムなどの電解質
・血算
・血糖、HbA1c
・尿酸
・脂質
などを確認します。
尿検査
尿蛋白が一時的なものなのか、持続しているのかを確認します。
必要に応じて、
・尿蛋白定量
・尿蛋白/クレアチニン比
・尿アルブミン
・尿潜血
・尿沈渣
などを評価します。
血圧測定
高血圧は腎機能低下の原因にも結果にもなります。
診察室血圧だけではなく、家庭血圧が重要になることもあります。
必要に応じた追加検査
検査結果によっては、
・腎臓の超音波検査などの画像検査
・自己免疫疾患などを調べる血液検査
・腎臓専門医での精密検査
などが必要になることがあります。
腎機能低下・尿蛋白は治療できますか?
治療方法は原因によって異なります。
すべての方に同じ薬を使用するわけではありません。
重要なのは、まず原因と重症度を確認することです。
例えば、
・高血圧があれば適切な血圧管理
・糖尿病があれば適切な血糖管理
・肥満があれば体重管理
・喫煙している場合は禁煙
・過剰な塩分摂取を控える
・腎機能に影響する薬剤がないか確認する
などを行います。
病態によっては、腎保護効果が期待できる降圧薬やSGLT2阻害薬などを検討することもあります。
治療内容は腎機能、尿蛋白、糖尿病や心血管疾患の有無などによって異なるため、個々の状態に合わせて判断します。
腎臓を守るために日常生活でできること
腎臓を守るためには、極端な健康法よりも、高血圧や糖尿病を含めた生活習慣を適切に管理することが大切です。
基本となるのは、
・塩分をとりすぎない
・適正体重を維持する
・適度な運動を続ける
・禁煙する
・血圧を適切に管理する
・糖尿病があれば血糖を適切に管理する
・市販薬やサプリメントを必要以上に使用しない
ことです。
一方、腎機能が低下しているからといって、自己判断で極端な蛋白制限やカリウム制限を始めることはおすすめしません。
必要な食事療法は腎機能や病態によって異なりますので、医師と相談して決めましょう。
「症状がないから大丈夫」ではありません
慢性腎臓病の重要な特徴は、かなり進行するまで症状が現れにくいことです。
むくみ、倦怠感、息切れ、食欲低下などが現れた時点では、腎機能がかなり低下している場合もあります。
そのため、
「体調はいいから再検査しなくてもよい」
と考えるのではなく、健診で異常を指摘された段階で一度確認しておくことが重要です。
健診で腎機能低下・尿蛋白を指摘された方はご相談ください
健康診断で、
・クレアチニン高値
・eGFR低下
・腎機能障害
・尿蛋白
・尿潜血
などを指摘された場合、まずは健診結果をご持参ください。
過去の健診結果があれば、一緒にお持ちいただくと腎機能の変化を判断するうえで非常に参考になります。
当院では、血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や心血管疾患も含めて総合的に評価し、必要に応じて腎臓専門医・専門医療機関と連携します。
豊田市をはじめ、知立市・安城市など周辺地域で、健診の腎機能異常や尿蛋白について受診先をお探しの方もご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q.eGFRが58でした。すぐに治療が必要ですか?
必ずしもすぐ薬による治療が必要とは限りません。
一度だけのeGFR低下なのか、3か月以上続いているのか、尿蛋白があるのか、以前から低下してきているのかなどを確認する必要があります。
まずは過去の健診結果と比較し、再検査を受けることをおすすめします。
Q.eGFRが60を少し下回っただけでもCKDですか?
eGFR 60未満が3か月を超えて持続する場合はCKDの診断基準に該当します。
ただし、年齢、尿蛋白、低下速度、基礎疾患などによって将来のリスクは大きく異なります。
「CKDかどうか」だけではなく、その程度と進行リスクを評価することが重要です。
Q.尿蛋白1+でした。放置しても大丈夫ですか?
尿蛋白は運動や発熱などで一時的に陽性になることもありますが、1+以上の場合には再検査をおすすめします。
繰り返し陽性になる場合には、尿蛋白の量や腎機能などを詳しく調べます。
Q.尿蛋白があるのにeGFRは正常です。問題ありませんか?
eGFRが正常でも、蛋白尿が持続する場合には腎臓病が隠れている可能性があります。
eGFRだけで「腎臓は正常」と判断することはできません。
Q.クレアチニンが少し高いだけなら様子をみてもよいですか?
クレアチニンは筋肉量や脱水などにも影響されるため、数値だけでは判断できません。
eGFRや過去の検査値、尿検査を合わせて評価することが重要です。
Q.何科を受診すればよいですか?
まず内科で評価することができます。
高血圧、糖尿病、薬剤、脱水などが原因となることも多いため、血液検査・尿検査などで原因を確認します。
高度な腎機能低下、強い蛋白尿、蛋白尿と血尿の併存、急速な腎機能悪化などがある場合は、腎臓内科での専門的な評価が必要になることがあります。
Q.腎機能は一度悪くなると元に戻りませんか?
原因によります。
脱水や薬剤などによる一時的な腎機能低下であれば改善する場合があります。
一方、慢性的な腎障害では完全には元に戻らない場合もありますが、原因となる病気や血圧、糖尿病などを適切に管理することで、腎機能低下の進行を遅らせられる可能性があります。
Q.健診結果は持っていったほうがよいですか?
はい。今回の健診結果だけでなく、可能であれば過去数年分の健診結果もお持ちください。
クレアチニンやeGFRがどの程度の速度で変化しているかを確認することが、腎機能を評価するうえで非常に重要です。
まとめ
健診で腎機能障害や尿蛋白を指摘されても、一度の検査だけで重い腎臓病と決まるわけではありません。
しかし、
・eGFRの低下が続いている
・尿蛋白が繰り返し陽性になる
・以前より腎機能が低下している
・高血圧や糖尿病を合併している
場合には、慢性腎臓病(CKD)が隠れている可能性があります。
CKDは初期にはほとんど症状がありません。
健診は、症状が出る前に腎臓の異常を見つける重要な機会です。
「少しだけ基準値を外れているだけだから」と放置せず、健診結果をご持参のうえご相談ください。
参考資料
・日本腎臓学会「CKD診療ガイド2024」
・日本腎臓学会「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023」
・KDIGO 2024 Clinical Practice Guideline for the Evaluation and Management of Chronic Kidney Disease
監修
監修:花園内科 院長 伊藤 創
医学博士
日本内科学会認定 認定内科医
日本循環器学会認定 循環器専門医
最終更新日:2026年8月28日