
健診で心電図異常を指摘された方へ|原因・要精密検査・受診目安を循環器専門医が解説
健康診断の結果に、
「心電図異常」
「要精密検査」
「ST-T異常」
「右脚ブロック」
「期外収縮」
「左室肥大の疑い」
などと書かれていて、不安になったことはありませんか?
心電図異常を指摘されたからといって、必ずしも心臓病があるとは限りません。
健康な方でもみられる心電図変化がある一方で、不整脈、狭心症・心筋梗塞、心筋症、心臓弁膜症などの心疾患が隠れていることもあります。
大切なのは、「異常」という言葉だけで判断するのではなく、どのような心電図所見なのか、以前からあるのか、症状や基礎疾患があるのかを総合的に判断することです。
このページでは、健康診断で心電図異常を指摘された方に向けて、代表的な心電図異常の意味、受診の目安、循環器内科で行う検査について解説します。
健診で心電図異常を指摘されても、必ず心臓病というわけではありません
心電図は、心臓の拍動に伴って生じる電気的な変化を記録する検査です。
不整脈のほか、心臓への負担、心筋梗塞の可能性などを調べるために広く行われています。
ただし、心電図は非常に感度の高い検査であり、
・体格
・年齢
・自律神経の影響
・電極を装着した位置
・検査時の緊張
・一時的な脈拍の変化
などによっても波形が変化します。
そのため、健診で異常と判定されても、詳しく調べると問題がないケースも少なくありません。
また、健診の心電図ではコンピューターによる自動解析が利用されることがありますが、自動解析で表示された所見だけで病気が確定するわけではありません。
実際の波形、過去の心電図、症状、診察所見などをあわせて医師が判断することが重要です。
健診でよく指摘される心電図異常
健康診断ではさまざまな心電図所見が指摘されます。
代表的なものについて説明します。
ST-T異常・ST低下・陰性T波
「ST-T異常」は健診で比較的よく指摘される心電図所見です。
軽度の変化であれば、心臓に病気がない方にもみられることがあります。
一方で、
・狭心症などの虚血性心疾患
・高血圧による心臓への負担
・心筋症
・電解質異常
などによって生じることもあります。
特に、以前の心電図にはなかった変化が新しく出現した場合や、胸痛・息切れを伴う場合には、循環器内科での評価をおすすめします。
異常Q波
「異常Q波」「QSパターン」などを指摘されることがあります。
心筋梗塞を過去に起こしている場合にみられることがありますが、体格や心臓の位置、電極の装着位置などによって似た波形になることもあります。
異常Q波を指摘されたからといって、過去の心筋梗塞が確定するわけではありません。
必要に応じて心臓超音波検査(心エコー)などを行い、心臓の動きを確認します。
左室高電位・左室肥大
心電図で、
「左室高電位」
「左室肥大」
「左室肥大疑い」
などと判定されることがあります。
痩せ型の方や若い方では、心臓に異常がなくても心電図の電位が高くなることがあります。
一方、高血圧が長く続くと心臓の筋肉が厚くなり、左室肥大を起こすことがあります。
高血圧、心臓弁膜症、心筋症などがないかを確認するため、必要に応じて心エコーを行います。
右脚ブロック
右脚ブロックは、心臓の中を電気刺激が伝わる経路の一部で伝導が遅くなっている状態です。
「不完全右脚ブロック」や「完全右脚ブロック」と記載されることがあります。
右脚ブロックは健康な方にもみられることがあり、右脚ブロックだけで他に異常がなければ、治療を必要としない場合もあります。
ただし、
・以前にはなかった右脚ブロックが出現した
・息切れや失神がある
・ほかの心電図異常もある
・心臓病の既往がある
といった場合には、心臓に基礎疾患がないか確認します。
左脚ブロック
左脚ブロックは、心臓の左側へ電気刺激を伝える経路に伝導障害がある状態です。
右脚ブロックと比べて心疾患を伴うことがあるため、初めて指摘された場合には循環器内科での評価が重要です。
心エコーなどで心臓の構造や収縮力を確認し、必要に応じて追加検査を行います。
期外収縮
期外収縮とは、本来の心拍よりも少し早いタイミングで心臓が収縮する不整脈です。
「上室性期外収縮」
「心室性期外収縮」
などがあります。
期外収縮は健康な方にもみられ、多くの場合は重大な問題にはなりません。
一方で、期外収縮が非常に多い場合、連続して出現する場合、心臓病を伴う場合などには詳しい評価が必要です。
健診の短い心電図だけでは1日を通した期外収縮の頻度は分からないため、必要に応じて24時間ホルター心電図などを行います。
徐脈・房室ブロックを指摘された場合
「洞性徐脈」など、脈拍がゆっくりであることを指摘されることがあります。
スポーツを習慣的に行っている方や睡眠中など、生理的に脈が遅くなることもあります。
一方、
・洞不全症候群
・房室ブロック
などの不整脈によって脈が遅くなることもあります。
特に、
・めまい
・ふらつき
・失神
・強い倦怠感
・息切れ
などを伴っている場合は注意が必要です。
「2度房室ブロック」「高度房室ブロック」「完全房室ブロック」などを指摘された場合には、症状がなくても早めに循環器内科へご相談ください。
頻脈・心房細動を指摘された場合
心電図で脈が速い「頻脈」を指摘されることもあります。
緊張や運動、発熱などによって一時的に脈が速くなる場合もありますが、不整脈による頻脈の場合もあります。
なかでも注意したいのが「心房細動」です。
心房細動では脈が不規則になり、
・動悸
・息切れ
・疲れやすさ
などがみられることがありますが、まったく症状がなく、健診の心電図で初めて発見される方もいます。
心房細動は脳梗塞の原因となることがあるため、指摘された場合には症状の有無にかかわらず循環器内科を受診してください。
QT延長を指摘された場合
「QT延長」「QTc延長」などを指摘されることがあります。
QT時間は、心臓が電気的に興奮してから元の状態へ戻るまでの時間を示します。
QT延長には、
・生まれつきの体質
・薬剤
・低カリウム血症などの電解質異常
・徐脈
などさまざまな原因があります。
著しいQT延長では特殊な心室性不整脈のリスクが高くなる場合があるため、原因を確認することが重要です。
服用している薬がある場合は、お薬手帳をご持参ください。
WPW症候群を指摘された場合
「WPW症候群」「WPW型心電図」などと指摘されることがあります。
これは通常とは異なる電気刺激の通り道が心臓に存在することによって特徴的な心電図波形を示す状態です。
生涯にわたって症状がない方もいますが、発作性の頻脈を起こす場合があります。
突然動悸が始まり、脈が非常に速くなることがある方は、循環器内科でご相談ください。
心電図異常を指摘されたら、循環器内科を受診したほうがよい?
健診結果に「要受診」「要精密検査」と記載されている場合は、症状がなくても一度医療機関を受診することをおすすめします。
また、「経過観察」という判定でも、次のような場合には循環器内科へご相談ください。
・以前の健診ではなかった心電図異常を初めて指摘された
・動悸がある
・胸痛や胸部圧迫感がある
・息切れがある
・めまいやふらつきがある
・失神したことがある
・運動時に症状が出る
・高血圧、糖尿病、脂質異常症がある
・心臓病の治療歴がある
・若年で突然亡くなった血縁者がいる
症状がなくても、心房細動など治療が必要となる病気が健診をきっかけに発見されることがあります。
このような症状がある場合は早急な受診が必要です
心電図異常に加えて、次のような症状がある場合には注意してください。
・突然の強い胸痛、胸部圧迫感
・安静にしていても続く胸の痛み
・突然の強い息苦しさ
・意識を失った
・冷や汗を伴う胸部症状
・強い動悸とともにめまいや意識が遠のく感じがある
これらは急性心筋梗塞や重篤な不整脈などの可能性があります。
症状が強い、または現在も続いている場合には、通常の外来受診を待たず救急要請を検討してください。
循環器内科ではどのような検査をする?
心電図異常の種類や症状に応じて、必要な検査を選択します。
12誘導心電図
まず改めて心電図を記録し、健診時の心電図と比較します。
以前の心電図がある場合には、今回新しく出現した変化なのか、以前から変わらない所見なのかを確認することが非常に重要です。
心臓超音波検査(心エコー)
超音波を使って、
・心臓の大きさ
・心臓の筋肉の厚さ
・心臓の収縮力
・心臓弁の異常
・心筋の動き
などを調べます。
左室肥大、脚ブロック、異常Q波、ST-T異常などを指摘された場合に有用な検査です。
ホルター心電図
通常の心電図は数十秒程度の記録であるため、ときどきしか起こらない不整脈を捉えられないことがあります。
そのような場合には、長時間心電図を記録するホルター心電図を行います。
期外収縮、心房細動、頻脈、徐脈などの頻度や出現時間を調べることができます。
血液検査
不整脈などの原因を調べるため、
・電解質
・貧血
・甲状腺機能
・腎機能
などを確認することがあります。
その他の検査
心電図所見や症状によっては、
・運動負荷検査
・冠動脈CT
・心臓MRI
・専門医療機関での精密検査
などが必要になる場合があります。
すべての方に同じ検査が必要なわけではなく、心電図所見や症状に応じて判断します。
受診するときに持参していただきたいもの
健診で心電図異常を指摘されて受診する際は、できるだけ次のものをご持参ください。
・今回の健康診断結果
・健診時に記録された心電図のコピー
・過去の健康診断結果や心電図
・お薬手帳
・他院で心臓の検査を受けたことがある場合はその結果
特に、心電図そのものを以前の記録と比較することは診断に非常に役立ちます。
結果表に「右脚ブロック」「ST-T異常」などの文字だけが記載されている場合でも、可能であれば実際の心電図波形をご持参ください。
健診心電図異常についてよくある質問
Q. 心電図異常と書かれていました。心臓病でしょうか?
必ずしも心臓病とは限りません。
健康な方にもみられる心電図変化もあります。一方で、不整脈や心臓病の初期所見の場合もあるため、「どのような異常なのか」を確認することが大切です。
Q. 症状がなくても「要精密検査」なら受診したほうがよいですか?
はい。
症状がなくても心房細動などの不整脈や、心臓の病気が見つかることがあります。
健診で「要精密検査」「要受診」と判定されている場合には、一度医療機関で評価を受けることをおすすめします。
Q. 右脚ブロックと言われました。危険ですか?
右脚ブロックは健康な方にもみられ、単独であれば治療が必要ない場合もあります。
ただし、新しく出現した場合や、息切れ・失神などの症状がある場合、ほかの心電図異常を伴う場合には詳しい検査が必要です。
Q. ST-T異常とは何ですか?
心臓の電気的な回復過程に変化がみられることを意味します。
健康な方にもみられる非特異的な変化から、心臓への負担や虚血性心疾患などが関係する変化までさまざまです。
「ST-T異常」という文字だけでは原因を判断できないため、実際の心電図波形を確認することが重要です。
Q. 期外収縮は治療が必要ですか?
少数の期外収縮は健康な方にもよくみられ、治療を必要としない場合も少なくありません。
ただし、頻度が多い場合、症状が強い場合、心疾患を伴う場合などには詳しい評価が必要です。
Q. 健診の心電図異常は何科を受診すればよいですか?
基本的には循環器内科が適しています。
循環器内科では心電図の詳細な判読に加え、必要に応じて心エコーやホルター心電図などを組み合わせて評価します。
健診の心電図異常は「所見の種類」と「以前からあるか」が重要です
健康診断で心電図異常を指摘されても、すべての方に重大な心臓病があるわけではありません。
一方で、症状がないため気付かなかった不整脈や心臓病が、健康診断をきっかけに発見されることもあります。
重要なのは、
・どのような心電図異常なのか
・以前からあるのか、新しく出現したのか
・症状があるのか
・高血圧などの基礎疾患があるのか
を総合的に判断することです。
健診で「要受診」「要精密検査」と指摘された場合や、結果の意味が分からず心配な場合には、健診結果と心電図をご持参のうえ循環器内科へご相談ください。
豊田市の花園内科では、循環器専門医が健診で指摘された心電図異常について、実際の心電図波形やこれまでの検査結果を確認し、必要に応じて追加検査を検討します。
関連する症状・疾患について
心電図異常とあわせて、次の症状や疾患についてもご覧ください。
・動悸
・胸痛
・不整脈
・心房細動
・心不全
参考資料
・日本循環器学会/日本不整脈心電学会「2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン」
・日本循環器学会/日本不整脈心電学会「2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療」
・日本循環器学会 循環器病ガイドラインシリーズ
※本ページは一般的な医学情報の提供を目的としたものであり、個々の患者さんの診断を行うものではありません。実際の診断や治療方針は、症状、診察所見、検査結果などによって異なります。
監修
花園内科 院長 伊藤創
医学博士
日本内科学会認定 認定内科医
日本循環器学会認定 循環器専門医
最終更新:2026年8月27日