脂質異常症とは?3つの数値と基準値を解説
- 伊藤 創
- 6月11日
- 読了時間: 6分
脂質異常症とは、血液中のLDLコレステロールや中性脂肪が多すぎる、またはHDLコレステロールが少なすぎる状態のことです。
自覚症状はほとんどありませんが、放っておくと動脈硬化が進みます。
まずは健康診断のLDL・HDL・中性脂肪の3つの数値と基準値を知ることが、最初の一歩です。
脂質異常症とは?どんな病気かをやさしく解説
脂質異常症とは、血液中の脂質(あぶら)のバランスが崩れた状態を指します。
以前は「高脂血症」と呼ばれていましたが、HDLが少なすぎる場合も問題になるため、現在は脂質異常症という呼び方が使われています。
脂質は体に欠かせない成分です。
細胞やホルモンの材料になり、エネルギー源にもなります。
ただ、多すぎたり少なすぎたりするとトラブルのもとになります。
そして脂質異常症の最大の特徴は、痛みやだるさといった症状がほとんど出ないことです。
そのため、多くの方は健康診断や人間ドックの血液検査で初めて指摘されます。
「特に困っていないから」と放置されやすいのが、この病気の落とし穴です。
脂質異常症の原因は何ですか?
主な原因は、生活習慣と体質の両方です。
食べすぎや脂っこい食事、甘い物やお酒のとりすぎ、運動不足、肥満、喫煙などは、脂質のバランスを崩しやすくします。
これらは生活の見直しで改善が期待できる要素です。
一方で、生まれつきコレステロールが高くなりやすい体質(遺伝的な要因)の方もいます。
また、加齢や、女性では閉経の前後にコレステロールが上がりやすくなることも知られています。
「太っていないのに数値が高い」という方も珍しくありません。
つまり、見た目や体型だけでは判断できないのが脂質異常症です。
なお女性とコレステロールの関係については、別の記事でくわしく取り上げる予定です。
なぜ脂質異常症を放っておくと怖いの?
結論から言うと、動脈硬化が静かに進んでしまうからです。
血液中に余分なLDLコレステロールが多い状態が続くと、血管の壁に少しずつコレステロールがたまります。
すると血管が硬く、内側が狭くなっていきます。これが動脈硬化です。
動脈硬化が進むと、血液の通り道が細くなったり、詰まったりしやすくなります。
その結果、将来的に心筋梗塞や脳梗塞といった命に関わる病気につながることがあります。
こうした変化は何年もかけてゆっくり進みます。
だからこそ、症状がないうちに数値で気づき、早めに手を打つことが大切なのです。
LDL・HDL・中性脂肪は何が違う?
ひとことで言うと、それぞれ役割が違います。下記の3つを押さえれば十分です。
LDLコレステロール…余分なコレステロールを全身に運ぶため、増えすぎると血管にたまります。いわゆる「悪玉」です。
HDLコレステロール…余ったコレステロールを回収して肝臓へ戻します。いわゆる「善玉」で、少なすぎると問題になります。
中性脂肪(トリグリセライド)…体のエネルギー源ですが、食べすぎや飲みすぎ、甘い物やお酒で増えやすく、多いと動脈硬化に関わります。
つまり、悪玉のLDLと中性脂肪は「多すぎ」が問題、善玉のHDLは「少なすぎ」が問題、という関係です。
3つはそれぞれ意味が違うため、ひとつの数値だけでなく、バランスで見ることが大切です。
「悪玉が多い・善玉が少ない・中性脂肪が多い」のどれかに当てはまると、脂質異常症と診断されます。
健康診断の結果票には、これらが数値で並んでいます。
まずは自分の3つの数値がいくつなのかを確認してみましょう。

脂質異常症の基準値はどれくらい?
日本動脈硬化学会の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」では、診断の基準値が次のように定められています。
高LDLコレステロール血症…LDLコレステロールが140mg/dL以上(120〜139mg/dLは境界域)
低HDLコレステロール血症…HDLコレステロールが40mg/dL未満
高トリグリセライド血症…中性脂肪が、空腹時の採血で150mg/dL以上、食後など随時の採血で175mg/dL以上
これらのいずれか1つでも当てはまると、脂質異常症と判定されます。
中性脂肪は食事の影響を受けやすいため、採血のタイミングで基準値が異なる点も覚えておくとよいでしょう。
なお、これは「病気かどうかを見分ける基準値」です。
実際に治療を始めるかどうかや目標値は、年齢・持病・他のリスクによって一人ひとり異なります。具体的な判断は医師にご相談ください。
数値が気になったらどうすればいい?
結論として、まずは生活習慣の見直しが基本です。
食事では揚げ物や脂身などの飽和脂肪を控えめにし、野菜や海藻などの食物繊維、青魚を意識するとよいとされています。
あわせて、ウォーキングなどの有酸素運動を週に何度か習慣にすることもすすめられます。
たとえば1日20〜30分の早歩きを、できる範囲で続けるだけでも意味があります。
禁煙や、お酒を飲みすぎないこと、体重を少し落とすことも、数値の改善につながります。
特に中性脂肪は、お酒や甘い物、食べすぎの影響を受けやすいことが知られています。
これらは特別なことではなく、毎日の積み重ねが少しずつ血液の状態を整えてくれます。
一方で、数値の高さや他の病気によっては、お薬による治療が必要なこともあります。
自己判断でサプリメントに頼ったり、逆に指摘を放置したりするのは避けましょう。
健康診断で指摘された数値が気になる方や、家族に心筋梗塞・脳梗塞の方がいる場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。
※食事や運動の具体的なコツは、今後の記事でもくわしく取り上げる予定です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 脂質異常症は自覚症状がありますか?
ほとんどの場合、自覚症状はありません。痛みなどがないまま動脈硬化が進むことがあるため、健康診断の数値で気づくことが重要です。
Q2. LDLコレステロールはいくつから「高い」のですか?
動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版では、LDLコレステロール140mg/dL以上で高LDLコレステロール血症と診断されます。120〜139mg/dLは境界域とされます。
Q3. 数値が高いと、すぐに薬を飲むことになりますか?
必ずしもそうではありません。治療方針は年齢や他の病気を含めて医師が総合的に判断します。
参考文献・出典
日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版」
厚生労働省 e-ヘルスネット(生活習慣病・脂質異常症に関する情報)
監修:伊藤創 循環器内科専門医
当院は愛知県豊田市花園町周辺で内科診療を行っています。本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療方針を示すものではありません。気になる症状や数値がある方は、お気軽にご相談ください。




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